茶道における四季の大切さ
茶道では、四季の移ろいを大切にし、その季節ならではの自然や風物を茶室に取り入れます。茶会の趣向を考える際には、季節に応じた道具や料理、掛け軸や生け花などが選ばれ、訪れた客が一瞬の季節感を感じられる工夫が施されています。四季の美しさを最大限に引き出すため、亭主(茶会の主催者)は細部までこだわり、心からのおもてなしを準備します。
春の茶会:芽吹きと新しい始まり

春の特徴とおもてなし
春は新しい生命の息吹を感じる季節であり、茶会にも春の柔らかな雰囲気が表れます。掛け軸には「春風」や「桜」などの詩句が用いられ、生け花には桜や梅などの花が飾られます。茶碗や水指には、淡いピンクや緑などの柔らかな色合いが選ばれ、春の温かみとやさしさが感じられる設えとなっています。お菓子も、桜餅や道明寺など季節のものを取り入れ、舌でも春を味わいます。
夏の茶会:涼を求める心遣い

夏の特徴とおもてなし
夏の茶会では、暑さを和らげ、涼しさを感じられる工夫が重要です。掛け軸には「涼風」や「流水」をテーマにしたものが用いられ、風鈴の音や竹の生け花などで涼感を演出します。また、茶碗には青や白の涼やかな色が選ばれ、茶室には風通しのよい設えが施されます。お菓子も葛饅頭や水羊羹など、冷やして美味しいものが提供され、暑さを忘れるひとときとなります。
秋の茶会:収穫と実りの季節

秋の特徴とおもてなし
秋は実りと収穫を祝う季節です。茶室には紅葉やすすきなど、秋の風物が取り入れられ、掛け軸には「秋風」や「月」をテーマにしたものが飾られます。茶道具には、土の温かみが感じられる焼き物や、赤や茶色などの秋らしい色合いが選ばれ、秋の風情が漂います。お菓子も栗や柿を使ったものが用意され、豊かな秋の味覚を楽しむことができます。
冬の茶会:温もりと静寂のひととき
冬の特徴とおもてなし
冬の茶会は、寒さの中で温もりを感じることがテーマです。掛け軸には「雪」や「寒椿」を題材にしたものが用いられ、茶室の設えは暖かみのあるものが選ばれます。茶碗には厚手で温もりのあるものが使用され、炉を囲んで、身体も心も温まるひとときとなります。お菓子には、甘さが濃く温かい和菓子が提供され、寒さの中での一服が格別に感じられます。
四季を通じて感じる一期一会の心

季節に応じた設えやおもてなしは、茶会において訪れる客がその時だけの「一期一会」を感じられる工夫です。一瞬一瞬を大切に、自然や季節と共に生きる茶道の心を、季節の茶会を通じて感じ取ることができます。茶道は、季節の移ろいに寄り添いながら、自然との調和を大切にしたおもてなしの形を伝え続けています。